HEAVEN KNOWS

「ひとまずお疲れ様でした、ルーイ」
明日でとうとうこの地は彼のものとなる。
椅子に深く腰掛け、優雅に足を組むその姿は学園に居た頃と何も変わらないようにも見える。
一年間の革命の中心に居ながら何も変わらないことはありえない。
彼には最初から全てが備わっていたのだろうか。
そんな人間は居ないと思いながらも、彼を目の当たりにすると納得できそうな気がする。
「ふん。これからが重要なのだがな」
咎める様な口調だったが、そこに非難の色は無かった。
「ええ。だから、ひとまず、と言ったのです。
 これからも自分は貴方についていきますから。
 自分は貴方が成し遂げることをこの目で確かめなければならないのですから」
「彼女はどうする」
ルードヴィッヒは顔を少し上げ、ナオジの顔を見たが、ナオジは表情を変えずに答えた。
「彼女も貴方についていくと思いますよ」
「そういった意味ではない」
「と言いますと・・・」
ナオジは無意識のうちに次の言葉を促した。
「そなたは彼女と籍を入れるのではないのか」
これまで何度も革命軍の仲間にからかわれる事はあったが・・・そもそも自分がからかわれること自体が珍しいのだが。
まさかルーイからそのようなことを言われるとは思わなかった。



自分は確かに女性として彼女を愛しているし、彼女を守りたいとも思う。
一方で彼女は自分に守られるような女性ではないようにも思う。
彼女にはもっとスケールの大きな、というわけでは無いのだが、目標の定まった人間が似合うと思う。
例えばルーイやオルフェのような。
かと言って譲る気は全く無い。



「それは自分の方向が定まってから考えようと思います」
「ふん、無難な答えだな。逃げ道を残しておくのか。お前らしくも無い」
ルーイの言葉は明らかに自分を責めているが、口調はそうでも無かった。
「ルーイ・・・」
何を言わせようとしているのだ、この人は。
答えを急かしているのだろうか。
「まぁよい。当分の間、私達の道は分かたれぬのだからな。
 これから彼女の気が変わることもありえよう」
「ルーイ!」






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